昨年ぐらいからよくTwitterを見るようになりました。
日本のニュースは役に立たないことも多いので、Twitterで検索したほうが知りたいことをピンポイントで見つけられたりするんですよね。
そうこうしている間に炎上も目にするわけですが、炎上しているコメントを見ると日本人って議論が苦手だよなと思う。
私ももともと先頭きって議論は苦手ですが、多少はフランスで学んだ気がしています。
主張をぶつけあってよりよい結論を
渡仏初期の頃は、私が言ったことに同居人が反論してくるたび「ほんっとああ言えばこう言うなー」とむかっ腹を立てていました。
でも彼は私を論破したくて反論していたわけではなくて、お互いの意見をたたかわせて、よりよい結論を出したかったんですよね。たぶん。
なぜそのことに思い当たったかというと、その頃通っていた語学学校で、フランス語の勉強の一環としてdissertation(小論文)を書いていたからです。
この小論文は250単語ぐらいの短いものですが、好き勝手に展開して良いわけではなく、たとえば
- 序論
- パート1:thèse(主張)
- パート2:antithèse(主張に対立する主張)
- パート3:synthèse(二つの主張の総括)
- 結論
のように構成を考えながら書きます。
採点はフランス語の運用だけでなく構成にもおよび、構成がまずいと「論点が飛躍している」「関連性が不明」と赤ペンを入れられたりします。沈。
たとえばお題が「コアラのマーチを食べるのは正義か」の場合、
私はコアラのマーチが大好きです。小さい頃から食べてるし、ぱりぱりした薄いビスケットとチョコレートの相性が抜群だし、いろんなコアラを見つけるのが楽しいし、親子のコアラを見つけるとラッキーな一日が始まりそうな予感がするし、これだけ楽しめるのに値段もお手頃です云々
的なことをつらつら書くと「それはあなたの感想ですよね」みたいな感じでたぶんボツで、
コアラのマーチを食べるのは正義です。
どこでも手に入るしおいしいしかわいいし、それにビスケットとチョコレートという組み合わせはたいへん相性が良いものです。
しかしコアラのマーチは準チョコレート菓子であり、原材料、特に使用されている油脂のことを考えると体にはあまりよくないかもしれません。
したがって、あまり食べすぎるのは良くないでしょうが、楽しみを我慢しすぎるのもこれまた健康には良くありません。
つまり、節度を持ってコアラのマーチを食べるのはやはり正義です。
という感じで構成らしきものをでっち上げたほうが、場あたり式に書き散らすよりはずっと良い点数が取れます。
実際、最初の例では「コアラのマーチ愛」しか伝わってきませんが、二番目の例では原材料に触れることによって「コアラのマーチを愛してるけど食べすぎには注意かもね」と、議論が多少深まっています(?)。
感想ばかりでは議論にならない
ということを念頭に置きつつTwitterの炎上を見ると、「それはあなたの感想ですよね」的コメントがどこでも百裂拳になっているおかげで、議論が必要なトピックでまともな議論に発展してないことが多い。
「自分としては困っていないので別にいい」
「俺はコアラのマーチが嫌いだから引っ込んでろ」
「みんながそうだって言ってるからそうなんじゃないの」
とか言われても「それはあなたの感想ですよね」だし、
「私の娘はコアラのマーチが大好きだと言ってます」
という「それはあなたのお嬢さんの感想ですよね」みたいなものまである。
こういう風景を見ていると、日本の学校でももうちょっと議論のしかたというか、論理的な思考を教えたほうがいいんじゃないかと思えてきます。
だいたい、一応大卒の私がいまさらこんなことに気づいている時点で、我ながら「どうやって大学卒業したんだよ」と思いますよね。とほほ。