フランスの高校(リセ)には哲学の授業があります。
通常は最後の一年で履修するので、日本で考えると高校3年生ですね。
「通常」と書いたのは、私学など二年間授業をするところもあるらしいということで。
どちらにしろ、フランスでは高校生活が終わりに近づいてくると哲学を履修するわけですが、日本の高校で哲学ってあまり聞かないですよね。
そこで、フランスの高校生はどうして哲学を勉強するのかを、その筋の人に聞いてみました。
バカロレア取得と進学のため
大学などの高等教育機関に入学するための「バカロレア」という資格について、きっと聞いたことがあると思います。
このシステムは1808年にナポレオン・ボナパルトによって導入され、って古!江戸時代のシステムじゃん!ナポレオンすごい!
あれ何の話だっけ、あっそうだバカロレアです。
日本では、高校は行って単位をとれば卒業できて、大学は入学のために別途試験を受けますが、フランスでは高校卒業のタイミングでバカロレアの試験を受けて、バカロレアを取得して大学に入ります。
で、そのバカロレアの試験の科目に哲学があります。
なので大学などに進学するためにも、リセで哲学を履修するんですね。
ちなみにバカロレアの哲学の試験はマークシートではなく記述式ですので、センター試験的な暗記では対応できません。
批判精神を養うため
哲学を勉強することがバカロレア取得や進学に必要なのはわかりましたが、
「どういう意図でそこに哲学が組み込まれてるの?」
と同居人の哲学講師のフランス人に聞いてみました。
オフィシャル的に言うと「批判精神を養うため」です。
それに、民主主義っていうのは戦いだから。
社会的・政治的なことを、おのおのがたがいつでも考えていないとまずいことになるでしょう。
だから、自分で考えて選択したり行動できるようになるのを助けるために、哲学の科目があるんです。
(50代・哲学講師)
うーむ、至極ごもっともです。
日本だと「倫理」が近…くない
日本の学校でも哲学者の名前にまったく言及しないわけじゃないんですよね、授業科目に「倫理」があったし。
しかしその内容は、どの時代になんていう哲学者がいて、なんていう本を書いて、どんな内容なのかをざっと説明する感じで、試験も暗記タイプでした。
つまり、なにかのテーマを掘り下げてレポートを書いたりということは全然なかったものです。
『死に至る病』とか『純粋理性批判』とか、キーワード単位では覚えてるんですけどね。
自分で考える力が大切
フランスで大学に進むような人は、世の中の諸問題について自分で考える力を養わなければならないってことですね。
「主体的に選択したり行動するために考えないと」なんて言われると真っ当すぎてぐうの音も出ません。
フランスのやり方をそのまま取り入れようとは言いませんが、日本の学校にも、「なんで?」という疑問を掘り下げるトレーニングがあったらいいのにと思います。
まあ、「学力=暗記」じゃだめだってことはすでに偉いひとたちがこぞって言ってますが。
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