「盗むのか、盗まないのか、それが問題だ」窃盗はたいしたことない罪なのか
渡仏してから約11年が経ちました。
その間、フランス生活やフランス語の学習などそれなりにやってきて、日本とフランスの狭間で思うことは相変わらずいろいろあります。
そして、ある程度の期間フランスに住んでいる日本人といえども、彼女ら・彼らが、必ずしも二つの文化の間に挟まっていないこともわかりました。
つまり、フランスにいるけれども、常に日本の物差しだけを使って物事を考えている人たちがいる。
というか、こういう人たちが案外かなり多いのではないか、ということもわかってきました。
私の11年間は、そうなりたくなくて、フランスに住んでいる以上フランスの物差しを手に入れたくて、試行錯誤してきた11年間ということもできます。
今なんかちょっとかっこいいこと言った。
「盗むのか、盗まないのか、それが問題だ」
というわけで、盗むか盗まないか、それが問題です(えっ)。
まあ、なんというか、規範意識が違うんですね!日本とフランスでは!
ようするに、在仏邦人を困惑させる事柄に、
- 公共交通機関での無賃乗車の多さ
- スーパーなどの小売店での窃盗の多さ
があります。
私も渡仏初期は、こういうことにたいして「おお…」と思っておりました。
ケース①無賃乗車
夜遅く、メトロに乗るべく駅に行きました。
しかし改札がチケットを認識しない。
そして駅員もいない!
しょうがないので、改札のドア(けっこう高さあり)をえいやっと乗り越えました。
そこはかとなく不法行為に及んだような気持ちになるけど、チケットを持っているのに駅員がいない以上、しかたない。
というわけで、パリで公共交通機関に乗るときは動きやすいパンツスタイルがおすすめ!
…ではなくて、無賃乗車っぽいムーブだとしても理由があることもあるんですよ!
ということがわかったので、改札を通ろうとしているときに後ろから来た人に
「一緒に通ってもいいですか?」
と言われたら、ダミアン浜田陛下くらい爽やかに
「もぉちろんイイよぉ!」
と快諾することにしております。
切符を通さない理由については、正当だったり不当だったり正直いろいろでしょうが、私の関知するところではない。
そもそも駅員さんもこういう行為に対して何もしません。
チケットコントロールは彼らの業務ではないらしく、それはそれできちんと専門のチームが専門の方法でやっているので、各駅の駅員においては何もしない、ということのようです。
ケース②万引き
続いて小売店なんかでの窃盗の件。
日本では万引きはれっきとした「罪」ですが、フランスでは万引きというのは「軽犯罪」というカテゴリーに入るらしく、どうも日本よりも刑が軽いようです。
したがって、どうも盗みに対する心理的なハードルも低い。
著しく低い。
そういうわけで、バカンスで日本を訪れたフランス人が、
うっかりフランス気分でおにぎりだとかおだんご程度のものを万引きしてお縄になる
→帰国日まで勾留される
→日本での万引き=窃盗罪の重大さにびっくりする
ということがあるそうです。
窃盗はたいしたことない罪なのか
法律というのはやっぱり、その法律が作用する範囲に住んでいる人の規範意識を作り出しますね。
罪の重さが違うこともあってか、日本とフランスでは「盗む」ということに対する感覚が、かなり違うようです。
かてて加えて、フランスの人の中には、法律にかんして、大多数の日本人とは違った感覚を持っている人がいる気がします。
たぶん、彼女ら彼らは、
「法律は人間社会を円滑に運営するためにある、あくまで手段」
と思っている。
こういう人たちの中には、お金があろうとなかろうと、ときどきあえて小さな盗みをはたらく人がいます。
その意図として、
「法律を守るために人間がいるのではなく、人間のために法律がある」
という、人間と法律との主従関係の再確認ということがどこかにきっとあると思う。
『ティファニーで朝食を』の映画の中に、主役のふたりが小さな盗みをはたらくシーンがあります。愉快な雰囲気のシーンです。
この小さな万引きも、「規範からの自由」という視点がなければ単なる犯罪でしょう。
しかし、このシーンの明るさ愉快さからは、「法律はあくまで手段である」という、社会への俯瞰的な視点と、社会からの逸脱をあえてやってのけた、非日常の祝祭感のようなものを読み取れるように思います。
というようなことをつらつら考えたりするのですが、日本人を相手にこういう話はまあまあしにくい。
いや、無賃乗車や窃盗を推奨しているわけではないんです。
しかしだな。
ちなみに日本で軽犯罪というのは
「人畜に対して犬その他の動物をけしかけ、又は馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者」
などのようです。
やらないように気をつけよう🐎🐃
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