PhiloFrance フィロフランス

語学力ゼロでフランスに渡ったどさんこが、いかにしてフランス語を学習し、フランス社会を観察し、フランス生活に適応していくかの記録。

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伊丹十三の「ヨーロッパ退屈日記」など読んだら面白くて優雅だった件

      2017/12/12




img_4855(曽祖父が1961年頃に撮った写真。伊丹十三の渡欧も同じ頃だろうと思う)

伊丹十三監督の「たんぽぽ」がパリの映画館で上映されていたのは去年の冬でした。「ラーメン屋の話かあ」ぐらいのテンションで見に行ったらもうあなた。人生のあらゆる側面を「食べる」という視点から切り取ったオムニバス的な、なんかすごい映画でした。

その後ふと、伊丹十三のエッセイ「ヨーロッパ退屈日記」「女たちよ!」「再び女たちよ!」を読んでみたのですがもうあなた。豊かな知識と鋭い観察と限りなく黒に近いグレーなユーモアが非常に面白いエッセイでした。

 

俳優だったことを知りませんでした

私は伊丹十三を映画監督としてしか知りませんでしたが、若き日の伊丹十三はデザイナー、その後俳優やらエッセイストだったそうです。本の装丁もご本人の手によるものだったりします。

1960年代に俳優の仕事のためヨーロッパに滞在した経験が「ヨーロッパ退屈日記」というタイトルで本になり、当時としては斬新だった文体は、現在のエッセイのはしりと言われています。こんなに重要な作品を今まで知らなかったとはなんてこった。

ちなみに本になる前は壽屋(現在のサントリー)の広報誌、「洋酒天国」での連載だったそうです。なるほど!

 

贅沢しているけどまったく下品じゃない

贅沢はしてますね。

ジャギュアやロータス・エランといった高級車を買ったり、服を買うためにあちらへ行ったり、靴を買うためにこちらへ行ったり、手袋を買うためにそちらへ行ったり、上質なもののためにイギリス・フランス・イタリアをまあ縦断してます。

高級品の話に終始したらそりゃあ鼻につくだろうと思いますが、それ以上に興味深い人との会話であるとか、心惹かれる知識や経験が随所に盛り込まれているので、全体としてぜんぜん嫌味じゃありません。むしろ伊丹十三がたびたび言及するフランスの下着ブランド「ルー(LOU)」が気になりだして調べたりしました。

 

題材のとりかたが個人的に秀逸

ヨーロッパでは英語でコミュニケーションをとっていらしたようですが、外国語を話すときに感じる劣等感の考察なんか的確すぎです。

考えていることのレベルには大差がない場合でも、あちらが母語でこちらが外国語というだけで、相手が先生のように上の存在に思えてくる不思議。それを明晰に文章にしているだけでなく、解決するための心の持ちようまで示してくれる十三。すばらしいよ十三。

思わずうなる数多の考察の他にも、外国人向けハラキリの詳細な説明、スパゲティの正しい作り方、犬の歯を根こそぎ抜く方法、耳にバナナが詰まっている紳士の話など、明日から使える実用的な知識が満載です。

 

Chapeau ! (脱帽)です

こんな面白いエッセイを書いて映画を撮って上質なものを知っている伊丹十三、すごいなあと思うほかありません。彼の知性がブランドに負けない輝きをもっているため、高級品も使いこなせるだろうなという感じ。頭がよくてたしなみのある人が上質なものを身につけているのは素敵です。

本日の三冊

この三冊はどれもお気に入り。ブックオフに売りません。「女たちよ!」の最後にある「配偶者を求めています」の箇条書き項目がロリコン項目を除いてだいたいツボで、時々ひらいてにやにやします。

 

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