年功序列で男尊女卑の日本型雇用システムはもう時代遅れ

年功序列で男尊女卑の日本型雇用システムはもう時代遅れ

フランスで求人を見ていてふと、会社からの家族手当というものがないことに気づきました。

ああ、専門能力にお金を払ってるからそういうのがないのか。

 

…じゃ日本のアレって何?

 

という疑問に答えてくれるのが濱口桂一郎著『働く女子の運命』です。

日本の雇用システムの特殊さがよくわかって、とても面白いです。

 

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特殊な日本型雇用システム

この本についての私の理解をざっくり書くと、日本の雇用は「終身雇用」と「年次昇給」がまず特殊であり問題です。

 

これはとどのつまり、

「流動性の低い雇用市場で、男性が同じ企業にずっと勤めることを前提に、彼らが妻子を自分の給料だけで養えるように賃金を年次で上げていく」

というシステムです。

 

この日本に特有の雇用システムがいろいろな問題を生み出しているというわけですね、どうもこれは。

 

日本型雇用システムの問題点

日本では女性がそもそも雇用市場で不利な立場に置かれていて、個人の努力でどうにかできる範囲を越えていることがたくさんあります。

 

しかし、なんだかこのシステムは女性だけじゃなくて、働く人全般にとって不合理なのではないかという気がしてきましたよ。

 

不合理①女性の活躍を妨げる

のっけから大ショックな事実ですが、日本の雇用システムは

「男性が妻子を自分の給料だけで養えるように」

設計されています。

よって、女性に男性と同じ賃金を支払うことはハナから想定されていません。えーっ!

 

そもそも、女性が結婚で退職することをあらかじめ織り込んで作られたのがこのシステムです。

そういうわけでスタート時点ですでに不利なのです。

 

さらに、結婚や出産や夫の転勤や介護等で退職することによって、女性はさらに不利になります。

雇用市場に戻っても相変わらず男性と同じ賃金体系には乗れないばかりか、正社員の仕事が見つからずに非正規やパートで働くことになる場合も多々です。

 

ついでに言うと、男性は年功序列で賃金を上げていかないといけないので、企業は男性優先で能力が上がるようなポストにつけたり研修を受けさせたりします。

 

不合理②労働と対価の関係がフェアでない

年次昇給というのは、そもそもの目的が

「男性が妻子を養えるように、少しずつ給料を上げていこう」

というところから始まっています。

よって、能力がどうであれ、年々昇給することが前提になっています。

 

ということは、このシステムを採用しているかぎり、同一労働同一賃金にはなりません。

同じ仕事をしていても勤続年数が長い人が高い賃金をもらうことになります。

 

そのうえ、すぐれた専門能力を持っていても、転職して勤続年数がリセットされると能力に見合った賃金が得られない、ということが起こります。

 

不合理③男性も犠牲を強いられる

日本の企業の多くは、専門能力基準で人を雇うのではなく、会社のメンバーとして人を雇います。

とりあえず入社して配属はあとで決まります、というアレです。

 

こういった「メンバーシップ型雇用」の会社では、仕事の能力だけでなく、会社への貢献度というか忠誠度というか、「お気持ち」的な評価の比重が高くなります。

あいつは頑張ってるとか、毎日遅くまでよくやってるとか、なんかそういうアレです。

 

そういった評価のシステムだと、やはり上長に嫌われたらまずいですし、同僚が残って仕事をしている時に定時で帰るのは勇気がいります。

 

日本型雇用システムに巻き込まれると、言いたいことも言えないこんな世の中じゃポイズンになる可能性が高く、俺は俺を騙すことなく生きていこうとすると会社人生はハードモードです。

 

さらに下手に転職すると、会社によっては中途採用組として出世の可能性が制限されたりするという。ポイズン。

 

日本の雇用システム、そろそろ変では

日本の特殊雇用システムは、制度設計時にはそれなりにそうする理由があったのでしょう。

でも、今となってはもう、いろいろと時代遅れのような気がします。

 

そもそも、家族手当は会社じゃなくて国がやることなんじゃないでしょうか。

それに、専門能力で採用するのが基本になれば、業界内での人材の流動性が高まって、雇用する側とされる側の立場も少しは対等に近づかないかしら。

とにかく、そろそろ日本はこの特殊システムを変えないと、優秀な外国人も一生来ないし、優秀な日本人もできるだけ逃げていくと思うんですけどね。

 

あと、未だに妻に対して「俺と同じぐらい稼いでないくせに」という夫がいると聞いて震えましたが、そういう人たちにはまずこの本を読んでもらいたい。

それで、自分が下駄を履かせてもらっていることを理解したうえで、もう一度同じことを言えるか考え直してもらいたい。

 

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