いつか安井かずみについて書きましたが、その後やはり気になって加藤和彦のエッセイを読みました。
その名も『優雅の条件』。これはなかなかに自信と勇気を要するタイトルです。
「優雅」、それはどうしたら近づけるのかいまいちわからない謎につつまれた資質。
「安井かずみと一緒に優雅な人生を送っていたらしい加藤和彦の言うところを参考にしてみよう」そう思って読み始めました。
結論から言うと、この本は西洋かぶれです。
「フランスかぶれになりたくない」と思って日々気をつけている私にとっては、反面教師的な本でした。
優雅ってこういうことなのかしら
どうも参考になるようなならんような、ならんような。
というのも、なんか引っかかるところが多いのです。
違和感①ヨーロッパの知識が微妙
フランスをはじめとしたヨーロッパの知識が、ちょいちょい私のものと噛み合いません。人によって認識はさまざまではあるけれど、しかし。
(スペインとの)国境のピレネーを越えたフランスのアクサン・プロヴァンス地方
エクサン・プロヴァンスはどちらかというといろんな意味でイタリア寄りの気がする。
外国ではよくこのクリスマスの雰囲気を楽しみたいがために25日が過ぎてもいわゆるお正月になっても1月の10日ぐらいまではこれを飾っておいたりする
クリスマスは本来1月6日の顕現日までなので、雰囲気でデコレーションを延長しているわけではない。
違和感②こだわりが多いわりに重要なところが鈍感
細かく包装には注文をつけて持ち帰り(…)
ジン・トニックなどあつらえて(タンカレーにライムを添えてなどと注文は細かく)
人間、どうしても好みや気分があって細かくなることは確かにあると思います。
しかし細かくしようとして細かくする人には注意が必要だと思う。なんか危険な香りがする。
「メリー・クリスマス」と言ったら「ハロー」と返してくる「親友」がユダヤ人であった
宗教的なバックグラウンドってその人の考え方を知るのにわりと重要な項目で、ちょっと突っ込んだ話をしていればなんとなく想像がつくものだと思うんですよね。
そういうところを探り合いつつ話し合いつつ親友と呼べる仲になっていくんじゃないかと考えるんですが、どうでしょう。
違和感③西洋かぶれ
- 飲み物は「シャンペィン」にワイン、カクテル
- 服はイタリア
- 外国でのヴァカンス
- ニューヨークとパリのお気に入りのレストラン
- お正月よりクリスマス
なんかこう、日本の要素が少ない。寂しい。
個人的には、自分の育った文化を土台に置きながら他の文化をおもしろがり、状況に合わせて双方を自由自在に引用したり応用して楽しむのが理想なので、こうも西洋のもので固められるとあんまりおもしろくない。
まあ、好みですが。
違和感④高い生活レベルへのこだわり
- ヨーロッパに一ヶ月滞在するのにスーツケースがふたりで5・6個
- ホテルは「事情が許す限りスイート」
- トリュフを「シャンペィン」で蒸しあげてフォアグラと食べる
などなど、もちろんそういうことがあってもいいんですけど、しかしそんなことばっかりだなあと思う。
個人的には、いいレストランに行ってもそれなりの振る舞いができ、かと思えば壁紙の脂っこいラーメン屋で餃子をラーメンにインしても楽しめるのが理想なので、こうも高級なもので固められるとあんまりおもしろくない。
まあ、好みですが。
優雅というより高級な西洋かぶれでは
ヨーロッパの知識がおおざっぱであったり、宗教的なことに鈍感であったり、加藤和彦って、本来は無邪気でざっくりした人なんじゃないかなと思いました。
変に気取らないで自然体にしてたほうがよかったんじゃないかなあ。
安井かずみの趣味に合わせた生活を送らなかったら、加藤和彦はどうなっていたのだろ。
人生を楽しもうとする姿勢は素敵だし、いくらか参考になるところもあります。
しかし加藤和彦は本を読むより音楽を聴いたほうがいいかもしれない、というのが正直な感想であります。
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