PhiloFrance フィロフランス

語学力ゼロでフランスに渡ったどさんこが、いかにしてフランス語を学習し、フランス社会を観察し、フランス生活に適応していくかの記録。

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パリ・モンパルナス墓地めぐり:お墓にメトロの切符を供える由来のこと

      2017/05/25

目的もなくモンパルナス墓地をぶらぶらしていました。フランスの墓石は個性豊かでおもしろく、モンパルナス墓地には様々な有名人が眠っているので、観光で来る人も大勢います。

そこで素敵なおじいさんに会い、たくさんのお墓を案内してもらって、貴重な墓地こぼれ話を聞きました。

 

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迷った観光客を手助けするおじいさん

ひとりで無目的に歩いていた私に、向こう側から歩いてきたおじいさんが「迷いましたか」と英語で聞いてきました。道に迷った観光客と思われた模様です。

目的がないので迷ってもいませんでしたが、優しさをむげにしたくない気持ちがはたらき「セルジュ・ゲンズブールのお墓が見られればと思ってます」ととっさに答えました。

「モンパルナス墓地で一番有名なお墓ですね」

とおじいさんは優しく道を教えてくれ、そのとおりに行くとゲンズブールのお墓が。誰かの短編で読んだ通り、「Le poinconneur des lilas(リラの門の切符切り)」の曲にちなんでメトロの切符が散らばっています。

ちょっと楽しくなってきたので、そのまま二番人気のサルトルとボーヴォワールのお墓にも行ってみました。墓石にはたくさんのメッセージとお花。それとメトロの切符。???

 

パリの墓地とメトロの切符

次のお墓へ歩いていると、向こう側からばったり「ゲンズブールのお墓は見つかりましたか」とおじいさん。「おかげさまで、次はマン・レイのお墓に行くところです」と言うと、そこまで案内してくれるとのこと。

道すがら、ボードレールのお墓にも寄ってくれました。お墓にはお花と、やはりメトロの切符。なんじゃこりゃと思っていると、

「ゲンズブールの歌を知らない観光客がパリの風習だと思ったのか、今では誰のお墓にもメトロの切符を置いていくんですよ」

とおじいさんの説明。さらにお墓を眺めながら、ボードレールと養父の確執のことも教えてくれました。養父とボードレールが一緒のお墓に入っているのは、ふたりの関係(悪い)からするととんでもないことのようです。

案内してもらったマン・レイのお墓は込み入った位置にあり、ひとりではなかなか見つけられなさそう。ここでもおじいさんの知識が炸裂し、芸術家の出身地や本名など解説が入る。よく知ってるなー。

 

おじいさんとモンパルナス墓地巡り

おもしろく話を聞いていると「そうだ、イオネスコ(劇作家)は知っていますか?」となり、私も伊丹十三のエッセイで知ったばかりのにわか知識を披露しつつ、イオネスコのお墓に案内してもらいました。エッセイのなかで五年目のロングランだったイオネスコの舞台は、あれから五十年ほどたった今でも続いているそうです。

そんな話をしながら、そのあとも「プルードン(無政府主義者)は知っていますか?」「ベケット(作家)は知っていますか?」と続き、結局2時間にわたるお墓参りツアーになったのです。

案内してもらったお墓は他にも、

  • セザール(彫刻家)
  • ポール・ベルモンド(彫刻家)
  • ジャック・ドゥミ(映画監督)
  • マルグリット・デュラス(作家)
  • ソニア・リキエル(デザイナー)
  • モンパルナスのキキ(界隈で一世を風靡した女性)
  • ピエール・ラルース(辞書の人)
  • ニコラ・ジャック・コンテ(筆記具メーカー「コンテ」創立者)
  • ブシコー(世界初の百貨店「ボン・マルシェ」創立者)

など。お墓ひとつひとつに解説がつき、おじいさんの博識に驚くばかり。

知識だけでなく、ソニア・リキエル埋葬の様子を偶然見かけたこと、彫刻家セザールのお墓のモニュメントは本物かとお墓にいる人に聞いてみたら彫刻家の奥さんだった話などなど、貴重な体験も聞かせてくれました。

最後の最後に案内してもらったデュラスのお墓で、デュラスの恋人の名前を見て「ブルターニュ系の名前ですね」と言ったら、よくできた子供を褒めるようにしてキャラメルをくれました。食べられなくてとってあります。

 

おじいさんにまた会いたい

おじいさんの奥さんはモンパルナス墓地に眠っているそうです。お参りやお墓の手入れをしに、マルシェの行き帰りに、おじいさんは墓地をたびたび通るそう。もしパリのモンパルナス墓地で親切なおじいさんに声をかけられたら、それは彼かもしれません。

 

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