元ギリシャ財務大臣の「父が娘に語る経済の話。」がやたら面白い

経済に無関心な人生を送ってきましたが、それはあまり良くないことのように思えてきました。

私は「人間は自由が大切」とばかりに場当たり的に生きてきましたが、人生にお金の話は必ずついて回るので、経済やお金への理解を深めることなしに「自由」は無理なんじゃないかと思えてきたのです。

とかなんとか頭の片隅で考えつつ、いつも通りKindle本を物色していてこの本を発見しました。

ヤニス・バルファキス著『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』

経済の本なのに、異様に面白いです。

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著者はあの個性的な財務大臣

作者は、ギリシャで財務大臣を務めていたヤニス・バルファキス氏です。

名前を聞いてもピンときませんでしたが、どうやら2015年のギリシャの経済危機のときにメディアにちょいちょい取り上げられていた、革ジャンにバイクで登場するあの財務大臣らしい。

あー、まったく政治家らしくない風貌の人でしたよね、覚えてる覚えてる。

経済の知識がなくても面白い

この本はそのバルファキス氏が、経済について娘に語るという体裁で書かれています。

よって専門用語は最低限にとどめられていて、経済学などをかじったことのない人にもとっつきやすいです。

「なぜ、こんなに『格差』があるのか?」

という問いから本がはじまり、それを説明するために、農耕の開始まで歴史をさかのぼっていきます。

「文字は農作物の余剰を記録するために生まれた」

という説明はメカラウロコでしたよね、確かにアイヌは狩猟・採取民族で文字を使っていなかったですもんね!

とこんな調子で、読んでいて「なるほどー」の連続です。

用語でつまづくことがないうえに説明もわかりやすく、『オイディプス王』『ファウスト』『フランケンシュタイン』『マトリックス』等々、有名な作品をちょいちょい引き合いに出して、これまた「なるほどー」な解説が続きます。

こりゃ勉強になりますね、というか読んでいると面白すぎて、勉強になるという感覚すらありません。

経済と自由と人類の未来

バルファキス氏は本の中で経済について解説するだけでなく、自身の立場もはっきりと語っています。

下手に要約して著者の意図を間違って伝えてしまったらいやなので詳しくは言いませんが、私はどうもバルファキス氏の考えかたがとても好きです。

私も、お金の使いかたは投票のようなものだから投票先にはなるべく気をつけようと思うし、ロボットが生み出す利益はベーシックインカムなどのシステムでみんなが分かち合えるようにしてほしいし、交換価値がなくても経験価値のある辺野古の海は埋め立てないでほしい。

とにかく、人類の未来をよりよくするために大切なことは、経済のことを人任せにしないで、市場社会を俯瞰的な視点から見たり考えたりする努力を忘れないようにすることですね。

国家や社会は、よそ者の目で見るほうがその本当の姿がよくわかると私が思ってきたからだ。

(中略)

世界のありのままの姿を見るために、精神的にはるか遠くの場所まで旅をしてほしい。

それによって、君は自由を得る機会を手にできる。

/ 位置No. 2424

これは本当にそのとおりだなと、フランスに来てから日本についていろいろ考えるようになった私も思います。

経済も、なんかよくわからんと思っていないで、もっと遠くまで旅に出たほうがよさそうです。

みんなにおすすめできる良書

ということで、とても勉強になり、これからも考え続けるきっかけを与えてくれる素晴らしい本。

私は確実に経済への理解が深まり、つまり自由に少し近づきました。

経済と関わりなしには生きられないけど経済の本をあまり読んだことのない人全員におすすめです。

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